2019年度入試総括その1(一橋大ロー入試分析・一次選抜基準点分析)

今回は『自習室等各ロースクールの施設情報分析(更改)』の予定でしたが

 2月19日に、2019年度一橋大学法科大学院入試の総括が公式発表されましたので

今回は特に情報が不足している2校、具体的には東大ロー(次回)および一橋大ロー入試分析を行いたいと思います。(速報については筆者のツイッターの過去記事を参照願います)

  ◆目次

 

(このブログとツイッターに情報を寄せてくださる方々の懇意・様々な方々との出会いにより、受験生に入試情報として共有できることになりましたので、この場を借りて感謝の意を表したいと思います。

 

 

 1.一橋大学法科大学院 2019年度入試結果(大学院公表資料)

・入試総括

http://www.law.hit-u.ac.jp/content/files/lawschool/pdf2/exam/2019lawadreport.pdf

・過去問および出題の趣旨

http://www.law.hit-u.ac.jp/lawschool/exam/pastexam/

 

2.未修者入試について

 ①未修者『他学部出身者・社会人経験者対象特別選抜試験』(9月実施)が廃止されたこともあり、未修者全体の受験者数は減少しました。人数傾向だけなら昨年(2018年度=2017年11月入試)揶揄された東大ロー未修者入試試験のような傾向にあります。

 未修者入試については(特別選抜は出願条件付きではあったものの)、年2回の選抜が1回に減ってしまいました。そのため、合計志願者減少は当然の結果であったともいえましょう。

    ただ今回は、前年同時期にも実施している11月入試についても出願者が減ってしまいました。

 (たしかに2018年度{2017年11月入試実施}の東大ローの競争倍率と比べるとまだ競争倍率は高いですが{◆参考:同大2018年度入試◆出願83名→一次75名→最終合格者59名}、それでも今年は未修者志願者が殆どのロースクールにおいて増加傾向にあったので(現時点で総括非公開校を除く)、今年度としては極めて珍しい結果なりました。*要因分析は既習項目ご参照ください

*なお、同一日程の東大ローについては昨年過去最低の志願者数であった反動からか、激増しています(詳細は次回記載予定)。

 

TOEICのスコアは(昨年度11月入試比)、最低点・最高点・合格者平均点を上回りました。ただし、未修者入試については上記の通り『他学部出身者・社会人経験者対象特別選抜試験』が廃止されている影響から一概に比較できませんので(∵夏秋2回に分離され入試結果が公表されているため、真の平均が算出できない)、結果のみ。

 

 

小論文については、相変わらず文章自体の難易度は高いようです。傾向は変わらず、社会科学系の論説文を読み、要約力や文章読解力に加え、自らの考えを述べるものです。文章自体は学部入試よりも難易度は高いです。

 また出典は学部入試と傾向の異なる論説文ですが、下線部の正確な解釈を求められる点では学部入試と類似しているようです。

 ただし、それに加えて社会科学系の小論文(=意見を述べる)を完成させることを求められているので、問題自体の難易度は高いと思います。また、仮に2次試験を通過しても面接があり、例年3割近く落とされてしまします。既修者入試よりも面接時間が長いので、きちんと志望動機等自らの考えを述べられるよう対策しておく必要があるようです。

 ◆追記:未修者他学部・社会人特別選抜は復活するか◆

 2018年度入試までは特別選抜がありましたが、合格者人数は大変少なく(募集若干名)、その反面で選抜自体は大変機能していました。

 が、2019年度入試より廃止されています。

 この制度の今後の展望としては、

・始めて2年程度で廃止されたこと

・法学部・法科大学院一貫教育(5年一貫プログラム)が今後新設されること

・廃止された後初となる11月入試の社会人・他学部出身者の合格者に占める割合が例年より高水準(未修については他学部56%・社会人25%・全体56%。既習未修合格者全体で非法16%・社会人10%・計19% )と、2013年度入試以来の高水準であり、制度を廃止しても求める社会人・他学部人材を充分に確保できたこと

から、制度運用上の支障が特段と生じない限り、廃止された制度が再度復活する可能性は極めて低いと考えられます。

2~3年で廃止された原因として考えられるのは、おそらく学内実績だと思います。

 人材としては素晴らしい実績のある社会人等を採用できたのだと思います。入試としてはきちんと機能していましたし、未修者の応募実績も好調でした。また制度としても法科大学院の理念に沿う、画期的なものであったと思います。

 採用された人材も、社会人であれば考えられるのは大手企業等、具体的にはマスコミ関連(新聞社やジャーナリスト)・大手金融機関(生保・証券等・監督管理)といった機関の勤務経験者といったところでしょうか(あくまでも傾向と筆者による入学者の予想)。旧司ベテランとは考え難いですし。

 ただし、そのような方がいざ入学しても、金銭面や税金面・社会保険納付の問題から、おそらくギリギリまで勤務してから入学してくるのでしょう。また、MBA課程等といった企業勤務歴・経験が少しでも役に立つ専門職大学院とは訳が違います。やはり今までの法律勉強の積み重ねがなく突然1年で法律知識を既習水準とするには無理があるのでしょう。

 また家事や育児・上述の社会保険や金銭面そして税金の問題・親の問題・突然社会復帰しなければならない事情、様々な不安や集中できない事情が生じてしまい、勉学に集中し難いといった事情もあるのかもしれません。

 画期的で運用が出来ていた制度が突然廃止されるという背景には、入学後何かしらの運用が上手にいかない諸問題があったということですので、考えられるのはこのような問題でしょうか(あくまでも筆者意見)

3.既修者入試について

◆志願者数の分析◆

 ・既修者入試については、志願者数を減らし、最も少ない202名となりました。

→この要因分析ですが、考えられることとして以下の点が考えられます。

 

(1)適性試験が廃止された結果、一次試験がTOEICのみで選考される初年度であったこと。(=初年度ゆえに選抜基準が不明確であり、これまで適性試験の点数でTOEICスコアをでカバーできたような・英語に苦手意識を持つ受験層が出願を回避した)

 一次試験がTOEICのみだと発表された際は、驚きました。

 しかも発表された当時はTOEICをまだ受験していなかったので、スコアが取れないのであればGPA等でリスクヘッジできた出願のほうが総合的に見てくれると思うこともありました。また今年初めての取り組みでしたので不安を覚えたという記憶があります。事実、最終的には同一日程で両方出願し、両方通ってしまうと、片方への3万円のお布施が発生してしまいました・・・。

 おそらく、過去のTOEIC合格者平均点を見て、出願をTOEIC不要な京大ローや、GPA等他の評価項目がありリスクヘッジのできる東大に変えた方も多いと思います。

その根拠に、

・今年の入試は2015年度入試以来の水準となるTOEIC合格者平均点(718.8点・昨年比+30点超)となっていること

TOEIC最高点も歴代入試2位タイ(985点・満点△5点。1位は2004年既修者入試)であったこと。

 上記のように、今年は例年に増して、特にTOEICの高スコア層が一橋を受験していたという事実が挙げられます。

 すなわち、出願段階や受験段階で、英語が少しでも相応にできると思う方の存在に、旧来であれば志願していたような層が振るい落とされてしまった可能性があると思います。(あとは、あくまでも未修ですが、今までに入ることランキング圏内に入ることのなかった東京外国語大学が未修の合格者数出身校1位になったことも、その傾向の疎明になるかと思います)

 

 ・・・もっとも入試総括を見てみると、TOEICのスコアは基準点を通過すれば、あとは実力次第(法律や面接勝負で勝負できる)という結果も出ています。

 なので心配せず、受験意思があれば「基準点(後述)」を充たせばあとはTOEICのスコア関係なく受験し、法律科目でぶっちぎって合格してください。

 合格者でも450点の方もいますし、500~合格者平均点以下の人はいます。正規分布ではないので、むしろ合格者平均点以下の方が人数的にも多いと思いますし、事実交流したことのある合格者の方でもTOEIC以外で挽回出来た方は普通にいます。

 また、面接でTOEICのスコアについて突っ込んで聞かれる等はありませんでした

 TOEICのスコアだけで劣等感を感じたり、あきらめるのは勿体ないです。

 スコアはあくまでもスコアに過ぎません。

事実、筆者はスコアはあっても英語が全然できない

  

(2)当時ネット等の噂では、東大ローの一次選抜は適性試験を一番見るのではないかという情報が蔓延しており、その適性試験が廃止されたことにより、今まで適性試験の点数が悪く出願を控えていたような層も含めて東大ローに出願できるようになったこと(注:確かに東大ローの適性試験合格者平均点は凄いことになっていますが、ツイッターでUPした評価機構の疎明資料を出したように、実は適性重視ではなくGPA重視だったわけですが、これについては後日予定の同ロー入試の記事で)

 

◆本論:一橋大学ロー入試既習におけるTOEIC足切りはいくらか◆藤澤注:2019年度時点

 

 過去の最低点を分析してみました。

①条件として、第一次選抜が行われる300人を超えていない年であること(又は募集人数の5倍)→越えている場合は【選抜】と表記

→過去の入試総括を見る限り、かつては募集人員の5倍または300人を超えると選抜となり、その際は相対的な点数勝負となったようです。

②2018年度(2017年11月)入試では、250名越えで20名程度落ちていますが(その際は当時適性3:TOEIC1)適性最低点の方やTOEIC460点でも通過していますので、おそらく選抜というより、書類上の【足切り】(設定基準点以下であるなら二次試験受験資格を得させないこと。昔あった適性試験点数が下位15%だと、自動的に受験資格を剥奪されたのと同じ)が行われたのかと推測。

 そのうえで、【過去10年のTOEIC最低点の推移】は

①選抜有期間:'10年:570→500→550→530→15年:520

足切り実施期間:16年:455→445→460→19年:450

③全員通過期間:'14年:395

 

 近年の足切り推移を見ていると(もっとも昨年までは適性試験があったので一概には言えませんが)、450点を概ねのラインとして推移しているようです。それは、(ア)今年の合格者最低点は450点であったこと・(イ)志願者が少なくても1次で数名足切りされたことからしても整合的かと思われます。

そして、本来は選抜する志願者人数ではないですが、2014年度入試でTOEICを395点で通過させた翌年度入試以降は志願者数が300名に満たなくても「足切り」を実施するようになったことが伺われます。

 

 なので、出願する方は足切り突破ラインなら450点(程度)

 ただし基準を例年より上げることや、選抜が仮に行われても安心できるように、TOEICは大学生平均程度(500点台中盤)あれば、法律科目勝負が出来ると思います。(500点については未修も同様。ただ未修の場合はアピールする要素が必要なので点数はあるほうが良いかと)

 既習は法律科目で勝負できれば良いのですから・・・!

  TOEIC良くても入試は合格しませんが、法律科目が良ければ合格します(もちろん面接や書類不備がないことも忘れずに)

 

なお、これだと高得点取得を目指す方の配慮に欠ける・肩透かしと思いますので・・・

 

高得点を目指すなら差別化できるだけのスコア、具体的には900点以上を目指すのが良いと思います。700点台でも加算してくれるロースクールもありますが(参考:https://law-information2019.hatenablog.jp/entry/2018/12/28/020439

TOEICを要求する大学ではあくまでも平均点に過ぎません。

今回は一橋大出身者が合格者数で同率首位でしたが、事実、同大学部生出身の方(今年の入学者ではない)は、(人によりますが)700後半~800点台を取得していましたので、他者と差別化して自己PRするのであれば900点あると良いと思います。

慶應ローの書類点もTOEIC900以上なら一律加算されるわけですし(詳しくは説明会動画等を参照願います)、実際その恩恵は大きかったです。

また、合格者を多く占める大学も一橋大学部出身者が同率トップ、また旧帝国大学早慶、難関と言われる大学が占めていることからしても、他者と差別化するのであればかなり努力やそれなりの点数が必要になってくると思います。

 

P.S.

同大の入試法律科目対策については具体的に記載できると思うので、それは夏頃(入試シーズン)に予定してます。