よく話題になる問題として
「予備試験の短答式試験に合格したのだが、出願予定校に評価されるのだろうか」
「法科大学院に対して〇〇検定合格証を提出しても意味があるのだろうか」
「宅建士・行政書士試験に合格したが、意味があるのだろうか」
これに対して、
「そんな法学部生なら簡単に取れる資格、出しても評価されない」
等といった意見があるのも事実です。
では、実際に「法律資格」に対する書類評価上の運用については、どのようになっているのでしょうか。各法科大学院(ロースクール)の運用実績を調べてみました。
以下では【法律資格】について記載します。
*外国語資格は以下記事を参照願います
又はtwitter過去記事にも参照願います。ただし、ツイッターはあくまでも速報ですので、上記リンクよりも網羅性がありません
*琉球大学は資格を評価する記載があるものの、法律資格についての記載が見当たらず掲載できていません。同志社大学についても(英語資格については記載がありますが)、法律資格について法科大学院認証評価内を含め明記なく、そのため記載できていません。
*なお、基本的に2019年度入試募集要項や公表されている法科大学院評価機構・自己評価に基づくものであり、2020年度入試からの変更点など確実な情報を保証するものではありません。またあくまでも公表資料を纏めたものであり、出願に際しては必ず前もって募集要項を確認ないし各校事務局にお問い合わせください。
【特定の法律資格ないし検定合格を評価する旨明記する大学】
◆私立大学法科大学院◆
・専修大学
→募集要項6頁に「評価の対象となる」として明記。士業合格証以外に予備短答合格でも評価。
・法政大学
→募集要項5頁「加点要素」参照
*雑談:上記2校とも入試成績によっては、全額免除だけでなく、加えて月額給付(法政は月5万、専修は8万)の恩恵を受けられる制度があるようです。
・明治大学
→資格に応じ最大10点加点。募集要項参照。予備試験も加点対象(既習)
・南山大学
→予備短答も考慮要素との記載。但し法律系資格は既修者コースのみ評価対象
・関西大学*ただし法学未修者入試に限る
→募集要項14頁など参照。資格能力個別に配点あり
・福岡大学
→加点は最大10点。行政書士や宅建は明記なし。予備試験も同様
http://www.ilp.fukuoka-u.ac.jp/html/entrance8_2.html
◆国立大学法科大学院◆
・金沢大学
→上限20点。ただし公認会計士や国家公務員資格など(予備は列挙されず)
ただし、列挙資格でなくとも面談を通して場合によれば加点される。
・広島大学
→上限20点。法学検定advanced(上級)や行政書士、宅建士合格も加点要素。
ただし公務員については国家総合職のみ
【取得等が出願要件となる大学】
・学習院大学(特待生入試)(http://www.gakushuin.ac.jp/univ/g-law/lawschool/examination/admissions.html)
→特待入試項目参照ください
【文言や記載から単体で相応の加点評価がされることがあると読み取れる大学】
◆私立大学法科大学院◆
・創価大学
→任意提出資料欄参照。
・中央大学
→募集要項および出願書類記載参照。「考慮することがある」との記載。しかし、評価されるか否かは各自提出資格による。
・愛知大学
募集要項5頁「判断基準」に「『資格』・特技(法律的素養を除く)」と一纏めに記載されており、かつ特技には(法律的素養を除く)との文言があり資格と特技を分類していることから、資格は法律資格をも含むと考えられます。
・早稲田大学(追加・変更)
2021年度入試募集要項によると『①の提出書類において法律能力を証明する資料を提出した場合も特に評価されます』との記載があり、例えば予備試験の短答でも場合により(合格点程度か)加点が予想されます。
◆国立大学法科大学院◆
能力証明資料(3頁)参照。既習コースのみであるが「考慮される」との文言。その中には予備短答も記載有
・東北大学
書類審査(書類点)の総合判定材料として利用。募集要項3頁参照
書類審査の項目で、『自己評価一覧(外国語の能力、専門的資格、社会経験等)』と単独項目で記載がある。ただし最終的な総合評価要素の一つで配点(加点)は不明
・岡山大学
募集要項12頁参照。予備試験短答式合格者については明確に記載あることから、法律資格については単体で考慮される模様。
なお、注意書きとして次の文言(同大学の学生募集要項)を引用する。
抜粋・引用「各種資格取得証明書・各種試験の成績等を任意に提出された場合は,本研究科の合否判定に際し,面接・書類審査の参考とはしますが,必ずしもすべてが有利に斟酌されるものではないことに留意してください。」
【単体での提出評価を想定せず、あくまでも書類審査・ステートメント内の記載内容に絡め、主張を補強する資料として添付可能であるに留める大学】
◆私立大学法科大学院◆
・駒澤大学
・日本大学
・(2019年度入試以前)早稲田大学(変更)→現在は個別資料として、法律能力を証明する資料を提出した場合も特に評価される可能性があるとして変更
・上智大学
→募集要項7頁「その他証明書」欄参照
→TOEIC等要件を充たせば特に高く評価される人材であるが、法律資格はこの4分類に非該当。しかし「その他資料」として添付は可能(書類の総合評価の一材料)。
・立命館大学(C方式及びD方式)
→募集要項および出願書類参照。記載欄が設けられたものの、資格による加点等記載なし。
・筑波大学
→募集要項には記載を確認できなかったが、平成28年自己点検・評価報告書35頁には書類評価の総合評価材料の一内容として記載有。また法律資格を除外する旨明記なし。
・東京大学
→特記事項欄「簡潔な書類に限る(たとえば、資格証明書)」との記載あり。
自己評価書等にも説明あり。なお、添付は可能だが評価については特に記載なし。
・千葉大学
→ただし証明書添付は不要。なお書式を見ると社会人実務経験者や専門職を予定している模様。(書式は置いといたとして、添付は一応可能)
・京都大学
→募集要項5頁参照
・大阪大学
→「法律家としての適性を明らかにする文書」内の添付・補助資料として。
・神戸大学
→募集要項14頁参照。
・九州大学
→司法書士など高度の職業資格に限る。募集要項4頁参照。
予備試験短答は「職業資格」ではない。また、行政書士は列挙されていない。
【『法律資格』についてはそれ単体で提出しても加点評価しないことが明確に記載のある大学】
◆国公立大学◆
・一橋大学
下記自己評価資料80頁参照
引用・抜粋:「本法科大学院においては、旧司法試験・予備試験の短答式試験や法学に関する一定の学力を必要とする各種資格試験の合格実績をもって加点することは行っていない。本学の選抜試験においては、自己推薦書における自己アピールとして旧司法試験・予備試験の短答式試験や法学検定試験の合格について記載する受験者が見られるが、これは一切加点事由とはならない」
→Q&A「●その他の要素の評価基準について 」参照。
引用・抜粋:本学では、法律についての素養は法律試験にて判断する方針をとっています。そのため、法学関係の各種試験の合格歴や成績は、その他の要素として評価することはありません。
http://www.law.osaka-cu.ac.jp/lawschool/faq/index.php
■結論・考察■
各校により運用は異なりますが、(例外もありますが)一般的に短答式の通過率が不調な学校は予備試験短答式等の成績や法律資格で加点する傾向にあるようにも思えます。
これは、短答式の合格率から不調であることからしても、合格率改善を考えるのであれば合理的な措置と考えます(但し、この措置で当該大学院に入学してくれるかは別の問題ですが・・・)
資格証明書のみを単独で提出しても効果のない大学もありますが、いずれにせよ「ステートメントと絡めて、その内容を補強するために資格を利用」すれば各校とも扱いは変わらないように思えますし、それは就職活動等と同様です(就職要件となっているものを除く)。
そのため、列挙された資格を単体で提出すれば加点されると明示されたもの以外の資格や受験校についてはステートメントと絡めて提出し、加点されればラッキー程度に考えればよいと思います。
そうすれば、「評価しないと書いてあるのに、読んでないな」等と思われるリスクは回避できますし、何にせよ
頑張った成果や努力は、少しでも人に認めてもらいたいものですよね。
繰り返しますが、「あくまでも主張を補強・増強する証拠」という位置づけで考えればよいと思います。
また、何でもかんでも添付すれば良いというものではないと個人的・経験則からそう思います。
たとえば「M&Aに特化した法曹」と主張するのに、その疎明として「ひよこ鑑定士合格証」を出しても、読み手にとっては(たとえば「養鶏農家・企業を合併させ、その際にひよこ鑑定士が有益である(?)」等特殊な事情がきちんと説明されていない限り・単独でひよこ鑑定士を評価するという特殊事情を除き)、読み手にとっては、「ん??この資格を添付した主旨は何だ??(頑張ったということはわかるが、ステメン評価との関係でどう関連性があるんだ?これでは努力はわかるが評価できないだろ)」となってしまいます。
聞かれていることに対し適切に主張・アピールし、そのための補強として資格証明を利用するのが経験則上適切かと思います。
そのため、筆者はあくまでも申述書に関連のある資格は提出しましたが、
たとえば「証券アナリスト」や「アクチュアリー資格」等、直結しない書類は提出すべきでないと考え、記載内容に関連する資格のみを補助資料として提出するに留めました。