慶應ロー2022年度入試 憲法速報解説

注意:更新日からもわかるとおり、予備校のなかで一番早い解答速報となります。他の解答などは比較せず速報的に解説した旨ご理解ください。

 

まず初めに・・・

慶應ロー入試分析(対策)、

好評賜わりありがとうございます。

 

なんと予備校のロー入試対策としては

 

わずか2週間(14日間)で

 

慶應ローの出願者が1100名程度でしたから

少なくとも受験生の23%超が

BEXAのリンクより記事をDL・閲覧

したことになります。

 

ありがとうございます。

そして、少しでもお役に立てて光栄です

 

来年度入試の際は、この記事を更にパワーアップさせる予定ですので

ご期待ください。

 

(来年度用に書くのであれば

同記事は文字数も多いですが

入試やステメン課題に対する重要点・疑問点に対応すべく

いわゆるコンメンタールを意識し、入試対策全てを盛り込んだ内容となっています。)

来年度受験の方は、出願の前に今一度確認いただくと、入試や課題等に関する疑問点が解消されるかと思います。

 

 

さて、記事で分析したとおり、

民法は、百選判例や改正民法の理解力を問う問題

憲法今年度は最新判例を素材とした例年の傾向とは異なる出題でしたが

 

刑法設問1の肢別問題は、
過去の共通到達度試験から類題が複数出題されており、

 

直前にある程度、分析したとおりの出題となりました。

 

いわゆる論パのみ暗記している人を極力落とそうと意図しており

受験生の現場思考力・理解力を問おうとしている旨、伝わってきます。

 

また、BEXA連載を読み、直前期に対策を徹底した方は、点数が非常に伸びたと聞いています。

 

引き続き分析等を行い、受験生のお役に立てれば光栄です。

 

さて、憲法です。

まず

同業者同士で利害対立を生じさせたくないので、

慶應ロー全科目の入試解答・解説をしません(今後もしません)。

 

ただし、今年度の『憲法』については以下質問箱で解説・回答をしてしまっており、

明らかに不公平となるので、

今回は質問箱回答以外にも、以下解説を転載・記載しました

なお、その際の質問箱回答については以下リンクを(ブログのほうが少し丁寧です)

慶應の憲法は何が正解筋でしたか? 集会の自由で書くのはまずかったでしょうか。 | Peing -質問箱-

 

なお、あくまでも速報であることを念頭に置いていただければ光栄です。

 

憲法解説をするまえに・・・基本の「き」>

 BEXA連載でも述べているとおり、まずは【問題文で聞かれていることは何かを正確に把握することができるか】が勝負の分かれ目です。

 なお法セミ連載の大学教授らによる司法試験解答速報と実際の出題者による解説とでも、解答がわれることもあることは周知のとおりです。

 完全な解答を求めるのであれば、採点後に公表される出題の趣旨や解説を待つのが適切でしょう。

 

(繰り返しとなりますが)出題の趣旨が出る前に、あくまでも速報という位置付けで掲載している旨、ご理解ください、

 


<問題解説>

⒈まず私立大学に対する損害賠償請求(民法709条)ということで、国VS私人という対立構造ではないことに注意が必要です。

 私立大学が被告ということであり、百選等に掲載されているいわゆる昭和女子大学事件と対立構造が類似してますね。すなわち、私人VS私人の構造です。

 そのため、このような場合でも憲法が適用されるのか、まずは前提として問題となります(いわゆる私人間効力について、間接適用説など。)。

 なお上記は憲法論述であるから当然書く必要がないと思う人もいるでしょうが、司法試験などのように「私人間効力については触れる必要はない」という指示がない以上、上記前提については1~2行で良いので触れるのが無難でしょう。

 


⒉そのうえで本件で原告はゼミ生Xらであって、侵害されるのは【政治学教授Aの研究発表『ではない』】ことに注意が必要です。

行政法の範囲となりますが、客観訴訟は試験で必要な知識として住民訴訟(もちろん機関訴訟もあるが)。そうすると本件では主観訴訟として主張することとなり、今回は”原告Xの保護された権利を侵害された旨主張する”ために法的構成をする必要があります。

その際に、他人の権利侵害を主張してもお門違いということは、わかりますよね。

 


 Xの構成としては一般的には「研究発表の自由」として構成してくるでしょう。ここで本件は政治表現ではありますが、これですぐに研究発表の自由として保障されないとするのは早計です。

 大学の【政治学】のゼミの研究発表の延長線上のシンポジウムとして評価できないでしょうか。

 ポポロ事件では判旨において「実社会の政治的社会的活動にあたる行為~共有しない」と学内の政治活動は学問の自由の範囲外としているように読めますが、本件で「政治学の研究発表」として認められる場合にまでその射程が及ぶのかは懐疑的です。

 上記のように説明すれば、同自由の侵害として構成することも可能です。中間的な性質もありうる本件の場合、客観的に判断した際にどのような事実や性質(要素)が強いかが判断の分かれ目となるでしょう。

 この自由で構成する場合は、上記の事実認定をある程度厚くする必要があります。出題者側も、そこには一定程度の配点を振っていることが強く考えられます。

 仮に上記自由で保障されないとした場合(または別の構成として)でも、本件は公開の集会という事情より集会の自由または政治表現の自由の侵害として構成することも可能です。

 具体的には、①本件では施設利用について大学側から不許可処分がされている事案であること・②600名入る教室でかつ学外の者も参加を予定+賛成反対中立的立場の者などが参加するシンポジウム等の事情から、公開の集会としての性質を有すると評価して、集会の自由の侵害として構成するというものです。

(その際、上記⑴で学問の自由としても検討したが認められないとしたうえで集会の自由を検討する答案とした場合には、学問発表ではなく「政治表現をする機会または政治的集会を自由にする権利を侵害された」という構成となるでしょう。)

 

 そのうえで、表現の自由における審査基準を定立し、問題文の事情をあてはめてください。表現の性質や制約の態様、時・場所・目的などの事実を拾いあげ、評価し、審査基準を定立するという流れです。

 

 あてはめについては、処分違憲の問題ですので、両者を比較し衡量する視点が重要となります。結論が出題者の意向と異なっても、説得的に書けていれば得点に影響はないので、問題文の事情に照らし説明していきましょう。

 個人的には

 この事案は、”Xらは私立大学の敷地内の教室の利用を申請したが、B大学により不許可処分が下され、その結果シンポジウムの開催が不可能となった”というものです。

 大学には施設管理権もありますし、そもそも一般に施設内の教室はあくまでも学生等に対する講義のために使用することを目的としています。つまり、関係者以外の一般人の使用をそもそも予定している場所・施設とは言い難いと思います(しかも私立大学)。つまり公民館などのように住民に広く開かれた施設ではないですので、不許可処分について憲法上の権利を主張して争い、認めさせるにはかなりハードルが高いように思えます。

 

 まずは速報解説レベルに留めますが、一度これらの視点から検討しているか確認してみてください。これらの点から少なくとも検討できている場合は、憲法の合格点等について心配する必要はありません。(もちろん、あてはめで差はつきますが)

 

 なお受験生の中には大学という事情から「部分社会の法理」について検討したというものもあったようです。百選にも掲載されている判例、いわゆる「富山大学事件」では単位認定の事案でしたが、それと本件は明らかに異なりますし、そもそも本件で侵害された権利が「一般市民法秩序と直接関係を有しない内部的な問題」に留まるということで争点たりえるのでしょうか。

 部分社会の法理をそのまま用いるというよりも、司法審査の厳緩で私立大学の具体的事情を考慮し判断することになると思います。

 詳しく知りたい場合は、上記判例や同判例解説などをご覧いただければ幸いです。

 

 なお、あくまでも入試は過去のことなので、必要以上に振り返る必要はありません。

 私が今回、模範解答をあえて作成していないのは、そのためでもあります(また憲法という科目の特性・入試期であるという点から)。

 

 あくまでも上記は合格点の水準を知るための解説として、読み物程度に利用していただければ幸いです。

 


                                  藤澤